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 学会報告

2009年2月14日 13:00〜13:50 一般演題
1. 長崎大学医学部・歯学部附属病院GID外来のドロップアウトに関する検討
○越本莉香1) 木下裕久2) 今村明1) 井上統夫3) 中根秀之1) 増崎英明3) 小澤寛樹1)
     1)長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 医療科学専攻 展開医療科学講座 精神神経科学
     2)長崎大学医学部・歯学部付属病院 精神神経科
     3)長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 医療科学専攻 展開医療科学講座 産科婦人科学
長崎大学医学部・歯学部附属病院精神神経科では平成14年1月より性同一性障害(GID)外来を開設しており、平成20年11月末現在まで64名がGID外来を受診している。
しかしGID外来を受診しても確定診断を行うまでの1年間の精神科受診に満たない前に自ら受診を中断するドロップアウト患者が多く存在する。
本報告ではGID外来を受診した64名のGID患者について、ドロップアウト者の割合を検討し、ドロップアウトに至る経緯について検討した。
患者の最終受診日から現在までに3ヶ月のブランクがあるものをドロップアウトした患者とし、その割合を検討した。
平成14年1月から平成20年11月までの新患患者64名のうち、11月末までにドロップアウトしたと判断された患者は35名であり54.6%と半数以上を占めた。
ドロップアウトに至った理由としては、就学や進学で長崎県を離れるといったやむをえない事情で店員を余儀なくされたという理由が多かった。
しかし特に理由もなく自己中断しているケースも少なからず存在した。
ドロップアウトした患者のうちFTMが多いのはFTMの受診者が多いためである。
ドロップアウトした患者のうち若年者層(10代 20代)の比率が高い。
3ヶ月のブランクでドロップアウトと判断しているがこの期間をもう少し長く取ると継続率は高くなると思われる。

 

2. 関西医大病院ジェンダークリニックの現状に関する検討
○織田裕行 片上哲也 山田圭造 守田稔 枷場美穂 岡村宏美 中平暁子
       吉野真紀 鈴木朋子 山田妃沙子 鈴木美佐 木下利彦
       関西医科大学精神神経科学教室
関西医科大学附属病院では各科が連携して性別適合手術を含め体系的な治療を行っている。
2003年1月にジェンダークリニックを開設した。
2003年7月に「性同一性障害に対する包括的治療」を関西医科大学倫理委員会に申請し、同年12月に承認された。
2004年10月に性別適合手術開始。
2005年4月にジェンダー来るニックの充実を図るため精神保健福祉士を配置した。
2008年9月末までに420名が受診した。
その内訳は特例法の診断書を希望する39名、MTF 129名およびFTM 252名であった。
治療希望者のうち、現在までに290名を確定診断し、153名のホルモン療法への移行と17名の性別適合手術への移行をおこなってきた。
以下の3点が重要な課題である。
a.受診希望者増加(待ち期間長期化 希望する治療内容の多様化)への対応
b.ホルモン療法の継続に遠方から通院できる利便性の高い医療施設の確保
c.性別適合手術に関する種々の問題(形成外科としては他者が手術適応の判定することに違和感があり他院で適応判定受けたものについては簡略化して再度適応判定している)

 

3.民間精神科病院(医療法人正和会日野病院)におけるジェンダー外来開設の試み‐9ヶ月間の報告と今後の課題について
○吉川有美 松永千秋
       医療法人正和会日野病院
当院は病床数280床を有する民間の精神科単科の病院である。
平成20年4月 当院一般精神科外来において「性同一性障害に関する診断と治療のガイドライン(第3版)」にもとづく診断と精神科領域の治療を目的としたジェンダー外来を開設した。
これまで横浜市内ではGIDに対応可能な医療機関がなく、GID患者は独自の判断で形成外科や精神科を受診せざるを得ない状況が続いていた。
そこでGIDに対応できなおかつ地域の拠点として機能できる医療機関を目指し、このたびジェンダー外来を開設した。
これまでの総受診者数は23名である。
患者自身が自分らしい人生を切り開いていけるようサポートを心がけている。
(症例: FTM 18歳 自分らしく生きたい 身の置き所がないように感じている)
単科精神科病院でもサポートできるという実績をつくりたい。
初診1時間 再診30分と十分な時間をとっているが 既存のリソースを利用することで持ち出しにならないようにしている。

 

4. 性同一性障害外来を受診した未成年患者についての検討
○山田妃沙子 鈴木美佐 織田裕行 片上哲也 山田圭造 守田稔 枷場美穂
     岡村宏美 中平暁子 吉野真紀 鈴木朋子  木下利彦
     関西医科大学精神神経科学教室
関西医科大学附属滝井病院にはGID外来への受診に関する問い合わせが平均月16件ある。
これらの問い合わせに対し精神保健福祉士が対応している。
最近では未成年GID疑いの子供を持つ親からの相談が増えてきた。
今回、未成年患者に注目し、特徴や抱えている問題点を明らかにすることで今後の支援のあり方を検討する。
対象は2004年1月〜2008年10月末までに、性別違和感を訴え当院GID外来を受診した未成年患者57名である。
対象の内訳はMTF疑い17名 FTM疑い44名で、親の同意が得られず治療導入に至らなかった症例、IQ70に満たない症例は除外した。
以下は問診表やカルテをもとに調査した結果である。
不登校歴 MTF疑い 73.3% FTM疑い 34.8%
中学卒牛以降で不適応状態 MTF疑い 60.0% FTM疑い 14.0%
緊急性があり早期受診の調整を行ったケース MTF疑い 5名 FTM疑い 2名
いずれも不登校や引きこもりで精神症状も見られ、すでに近医にて向精神薬が処方されていた。
FTMは本人から MTFは不登校で家族からの問い合わせが多い。
FTM本人からの問い合わせが多い理由としてはFTMの方が行動力があるからではないかと思われる。

 

5. 一般男女及びGIDのMtFとFtMのTCI検査結果の比較
○宮島英一1) 2) 山城貴恵1) 平良直樹1) 近藤毅2)
      1)医療法人天仁会クリニックおもろまち
      2)琉球大学医学部精神病態医学分野
一般女性162名 一般男性200名 FTM48名 MTF19名についてTCI(Temperament and Character Inventory)性格検査を行った。
4つのグループ間において、遺伝性の強い気質(Temperament)、新規性追求、損害回避、報酬依存および持続性の4項目と、後天性の強い性格(Character)、自己志向、協調性、自己超越性の3項目の合計7項目について比較を行った。
その結果は以下の通りである。
持続性 FTM > 一般男女
自己志向 MTF < 一般男女
協調性 FTM > 一般男性
自己超越性 MTF < FTM 一般男女
クリニックを受診するFTMは中核群が多く、ホルモン療法や性別適合手術を希望し、最終的に戸籍変更まで希望する例がほとんどである。
周囲の理解が得られており、そのため持続性や自己志向そして協調性の点数が高く、自己超越性のスコアが低いと思われた。
その反面MTFは手術まで希望する例は半数ほどにとどまっている。
MTFの場合社会生活に不満足を感じている例が多かった。
そのため自己志向のスコアが低く、自己超越性のスコアが高いものと思われた。
MTF 楽観的で粘り強い努力家 協調性が高く現実的である
FTM 不安や人見知りがつよい 自己不信があり空想主義的
といった傾向が導かれる。

 

2009年2月14日 14:00〜14:50 一般演題
6.地方都市における性同一性障害に対するホルモン治療の現状と問題点
○井上統夫1) 平木宏一1) 北島道夫1) 中根秀之2) 小澤寛樹2) 増崎英明1)
   1)長崎大学産婦人科
   2)長崎大学精神神経科
当科(長崎大学産科婦人科)では2003年より精神神経科と協力して、GIDの身体的診察、内分泌学検査およびホルモン療法をおこなっている。
当科に紹介されたGID患者を対象とし、ホルモン療法の効果、副作用、治療継続状況さらには治療に当たっての問題点について調査した。
これまでの実績は以下の通りである。
当科で治療をおこなったもの MTF 10例 FTM14例
現在もホルモン療法を継続しているもの MTF5例 FTM9例
転居により受診できなくなった例 MTF2例 FTM1例
転院を希望したもの FTM3例
脱落したもの MTF3例 FTM1例(MTFはホルモン剤を入手しやすいためと考えられる)
経済的理由から受診回数を減らしたり検査を受けない例や、海外SRS後の合併症でフォローできていない例があった。
初診時年齢が10〜20代の若年者が24例中16例と3分の2を占めた。
FTMではエストロゲンが抑制されにくい例がある。

 

7.性同一性障害のホルモン動態に関する研究‐唾液中の複数ホルモン濃度一斉測定法を用いて
○正岡美麻1) 坂口菊恵2) 針間克己3) 阿部輝夫4) 本間誠次郎5) 長谷川寿一1)
     1)東京大学大学院 総合文化研究科
     2)お茶の水女子大学大学院 人間文化創成科学研究科 日本学術振興会
     3)はりまメンタルクリニック 4)あべメンタルクリニック 5)あすか製薬メディカル
GIDのホルモン療法に関し、当事者からは同様の投与量でも投与後の効果に個人差が大きいとの声が聞かれる。
投与後、ホルモンが各個人の体内でどのように代謝されているかは、効果の個人差につながる重要な問題と考えられるが、そこに焦点を当てた研究はほぼなく、個々人に最適なホルモンの投与量・間隔を決定する基準となる十分な基礎データは存在しない。
本研究の目的はさまざまなGID当事者の性ホルモン動態の特性について実証データを蓄積、ホルモンの投与と代謝のされ方・効果について検討することである。
対象者は精神科に来院した成人FTMおよびFTXである。
ホルモン療法 未加療者は30日間 加療者はホルモン投与翌日から次回投与日まで、毎朝起床時に唾液を採取し、家庭用冷凍庫で保存した。
これを資料とし、あすか製薬メディカルにてホルモン濃度の測定を行った。
また対象者に治療効果や副作用について質問票への回答を求めた。
測定したホルモンはテストステロン、DHEAジヒドロエピアンドロステロン、アンドロステンジオン、エストラジオール、プロゲステロン、コルチゾールの6成分である。
各成分の変動から予測どおり従来の代謝経路のとおりであると考えられた。

 

2009年2月14日 15:00‐16:00 シンポジウム1
  「望みの性別で暮らしていくために‐当事者の社会適応とサポートシステム‐」
    座長 石丸 径一郎(国立精神・神経センター精神保健研究所)
  精神科外来受診者における性同一性障害者のRLEと臨床的特徴
                    針間克己 (はりまメンタルクリニック)
2008年4月1日より12月12日までに はりまメンタルクリニックを受診し、一定の質問項目の情報を得た638名(FTM405名 MTF233名)の性同一性障害者の、RLEと臨床的特徴について報告する。
RLEを「望みの性別で学校生活ないしは職業生活を送る」と定義し調査した。
FTMの50.6% MTFの42.5%がRLEを行っていた。

学校でカムアウトしているもの
ホルモン療法を受けているもの
カムアウトありFTM100% MTF80% カムアウト無しFTM50% MTF60%
ホルモン療法を受けていないもの
カムアウトありFTM38.5% MTF22.2% カムアウト無しFTM0% MTF0%

職場でカムアウトしているもの
ホルモン療法を受けているもの
カムアウトありFTM94.3% MTF83.3% カムアウト無しFTM76.3% MTF30.0%
ホルモン療法を受けていないもの
カムアウトありFTM48.1% MTF40.0% カムアウト無しFTM12.4% MTF12.5%
MTFはカムアウト無しでは職場でのRLEは難しいと考えられる。

当事者が社会の中でよりよく暮らしていくために
                    上川あや (東京都世田谷区区議会議員)
「性同一性障害」概念にもとづいた医療体制の構築、戸籍の性別変更を可能とした特例法の成立、、当事者とその支援者による地道な啓発努力を経て、性別移行に対する社会の受け止め方は、単なる「変人扱い」から「人権課題」へと大きく変化した。
それにともない当事者の生存戦略のトレンドも、かつての完全なクローゼットを目指したものから、カムアウトを含め、周囲の受容を積極的に模索するものへと変化した。
しかしながら時としてこうした意識の変化は「一方的な権利の主張」「個人の人権感覚の無理強い」をともない、本来なら避けることができた紛争も引き起こしているのではないかと感じている。
当事者が社会の中で安心して暮らしていくためには、周囲との相互理解と協調が欠かせない。
その意味で当事者の生存戦略には「相手の感情に想像力を働かせた対処」がなにより大切なのではないかと感じている。

1990年代〜特例法以前は、過去の告白は「身の破滅」という危機感が広く存在した。
特例法以降は性同一性障害の認知も広まり医療のハードルが低下した。

針間ブログからの言葉
性別移行は匍匐前進で → RLEがないまま大望を抱く
SRSや性別変更に過大な期待 → パンツの中や戸籍を見ているわけではない
GIDの認知は上がったが認知は関心度に比例しない。
自己を客観視すること および よきアドヴァイザーが必要である。

針間先生のアドヴァイス
アドヴァイスは積極的にはいたしません。
賛成できるときは賛成するがそうでないときははっきりした物言いはしない。

 

2009年2月14日 16:15‐17:45 教育講演 
  「わが国における性同一性障害‐これからの課題‐」
  座長 小澤 寛樹
      (長崎大学大学院医歯薬学総合研究科医療科学専攻展開医療科学講座精神神経科学)
  講師 山内 俊雄 (埼玉医科大学 学長)

今年で倫理委員会答申(1996年)から13年 SRS開始から10年になる。
a.医療のたどった道
b.我が国のGID医療の課題
c.課題の解決のために

a.医療のたどった道
外国の場合
1)genderの概念の誕生 Havelock Ellis
一部にはTV(異性装)に限った現象であるが一部の異なる人がいる。
異性装により反対の性別に属していると考える。
1955年 ジョン・マネーがgender roleという言葉をはじめて用いた。
→ 生物学的性と社会学的性の発見
2)SRS
19世紀にさかのぼる。
Transsexualismと呼び反対の性に属したいと考えると定義 ハリー・ベンジャミン 1954年
3)診断基準の発達
4)GID医療の始まり
1964年 ハリーベンジャミン協会設立
1979年 ハリーベンジャミンSOC(Standard of care)の整備
日本の場合
1969年 ブルーボーイ事件
1995年 「性転換治療の臨床的研究」の申請
1997年 ガイドライン制定
1998年 初めてのSRS
 急速に知識を手に入れ諸外国に追いつこうとしている。
 法的対応や社会的対応は遅れている。
b.我が国のGID医療の課題
1)専門家の養成 GID研究会の発足 → GID学会への発展
診断
生物学的性の決定
社会的性の診断(反対の性への持続的な同一感)
除外診断

成因の調査研究 → 成因を明らかにすることが必要である。(脳の構造など)
発現頻度 → 行政への働きかけにも必要 学術的なエビデンスのために
2)施設の整備
待ち日数が長い
なかなか治療してもらえない
埼玉医科大総合医療センターの例
3)経済的配慮
保険医療の対象とすることなど
4)法整備と社会認知
特例法など

c.課題の解決のために
1)GID学会の活動を高め機能を発揮する
2)当事者ならびに支援組織の強化
支援センター(仮)に期待すること → NPOで組織がしっかりしている 公正中立で信頼性が高い

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